名古屋のソウルフード「スガキヤ」が、約20年ぶりに関東エリアへ再進出します。2026年秋冬に神奈川県で2店舗をオープンする計画が、6月15日に正式発表されました。フードコートで430円のラーメンを提供してきたスガキヤが、なぜ今このタイミングで関東に戻るのか。その背景には、創業80周年の節目と新社長就任、そして「1,000店舗チェーン構想」という壮大な目標があります。
スガキヤとは 1946年創業・名古屋が誇る80年のラーメン文化
スガキヤの始まりは1946年、終戦直後の名古屋・栄でした。創業者の菅木清一氏が弟と義兄とともに「甘党の店」を開いたのが原点で、ぜんざいや焼き芋を販売していたそうです。1948年にラーメンの提供を開始し、「甘党とラーメンの店 寿がきや」と改名。屋号の「寿」は縁起担ぎで付けられたものだと言われています。
現在はスガキコシステムズ株式会社として、東海地方を中心に約258店舗(2024年8月時点)を展開しています。魚介だしと豚骨を組み合わせた独特のスープは、名古屋っ子にとって子どもの頃から慣れ親しんだ味。実際にフードコートで食べてみると、魚介の香りが広がる瞬間に「名古屋に来た」と実感する方も多いようです。ショッピングモールのフードコートを主戦場に、手頃な価格帯で「日常食としてのラーメン」を提供し続けてきました。
2026年3月には創業80周年を記念した「スーちゃん祭」を開催。ラーメンと甘味のセットを半額で提供するなど、ファンの間で話題を集めました。80年という歴史を刻みながら、なお攻めの姿勢を崩さないところがスガキヤらしさかもしれません。
関東再進出の全貌 神奈川2店舗から始まる3年50店舗計画
今回発表された関東再進出の概要は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 再進出時期 | 2026年秋冬(年内) |
| 初期出店数 | 神奈川県に2店舗 |
| 中期目標 | 関東エリアで3年間に50店舗 |
| 長期目標 | 全国1,000店舗チェーン |
| 新体制 | 6月24日付で菅木寿一氏が代表取締役社長に就任 |
注目すべきは、最初の出店地が東京ではなく神奈川県を選んだ点です。具体的な市区町村やオープン日はまだ公表されていませんが、一部では横浜エリアが候補として挙がっています。過去の失敗を踏まえ、いきなり東京の激戦区に飛び込むのではなく、まず足場を固める戦略だと考えられます。
スガキコシステムズは今回の再進出にあたり、「過去の撤退で得た学びを生かし、コスト構造とブランド発信の課題を徹底分析した」とコメント。ピーク時の混雑緩和や厨房改革など、かつてのビジネスモデルを根本から見直した上での挑戦であることを強調しています。
過去2度の撤退 なぜスガキヤは関東で苦戦したのか

実は、スガキヤの関東進出は今回が3度目の挑戦です。過去2回の撤退には、それぞれ明確な構造的理由がありました。
1回目の撤退(1999年)
1980年代から90年代にかけて、スガキヤはショッピングセンターのフードコート中心に関東展開を進めました。しかし、同社のビジネスモデルは「商圏人口4万人未満の地域で成り立つ設計」だったため、首都圏の高い家賃とオペレーションコストに耐えられませんでした。不採算店を閉めると残った店舗の配送・管理効率も悪化する悪循環に陥り、1999年までに関東から完全撤退しています。
2回目の撤退(2006年)
2004年、満を持して東京・高田馬場に再進出店をオープン。しかしわずか2年で、2006年9月30日に閉店。ブランド認知度が関東で低く、「安いラーメン」というだけでは差別化できなかった面もあると言われています。
ちなみに、当時のラーメン1杯の価格は320円前後。現在の430円でも驚きの安さですが、当時はさらに安かったわけです。それでも関東では勝てなかったという事実が、3度目の挑戦における本気度を物語っています。
MoMAも認めたラーメンフォーク 環境配慮から生まれたデザインの傑作

スガキヤを語る上で外せないのが、あの独特なラーメンフォークです。フォークとスプーンが一体化したこのカトラリーは、1978年に名古屋の陶磁器メーカー・ノリタケとの共同開発で誕生しました。
開発のきっかけは、意外にも環境問題でした。割りばしの大量消費を減らすため、繰り返し使えるカトラリーとしてデザインされたのです。丸みを帯びた先端でスープをすくい、フォーク部分で麺を絡め取る。箸とレンゲの2つの役割を1本でこなす機能美は、2008年にニューヨーク近代美術館(MoMA)のミュージアムショップでの取り扱いにつながりました。
デザイナーは高橋正実氏。現在もMoMA Design Storeやロフトなどで販売されており、スガキヤの店舗に行かなくても手に入ります。価格は1本約1,400円前後(MoMA版)。名古屋ローカルのラーメンチェーンから生まれたカトラリーが、世界のデザイン史に名を刻んでいるという事実は、意外と知られていません。
430円ラーメンの秘密 なぜスガキヤは安さを維持できるのか

2026年3月の価格改定で、スガキヤのラーメンは390円から430円に値上がりしました。それでも、牛丼チェーン並みの価格帯を維持しています。
安さの秘密は、徹底したセントラルキッチン方式にあります。スープや具材を工場で一括生産し、各店舗では最小限の調理で提供する仕組みです。フードコート特化の店舗設計も、家賃コストの圧縮に寄与しています。
たですし、関東再進出では首都圏の物価・人件費・家賃に対応する必要があります。今回の「厨房改革」という表現には、これまでのコスト構造を関東仕様に再設計するという意味が含まれているのでしょう。3年で50店舗という目標は、配送効率を確保できるだけの店舗密度を早期に作り上げ、かつてのコスト構造の課題を回避する狙いがあると推測されます。
よくある質問

スガキヤの関東1号店はどこにできますか
2026年6月時点では、神奈川県内としか発表されていません。具体的な市区町村やオープン日は未公表です。横浜エリアが有力との見方もありますが、公式発表を待つ必要があります。
スガキヤのラーメンは今いくらですか
2026年3月の価格改定後、ラーメン1杯430円(税込)です。改定前は390円でした。
スガキヤはなぜ以前関東から撤退したのですか
商圏人口4万人未満向けのビジネスモデルが首都圏の高コスト環境に合わず、1999年と2006年に2度撤退しました。今回は厨房改革やコスト構造の見直しを経ての3度目の挑戦です。
ラーメンフォークはどこで買えますか
MoMA Design Store、ロフト、Amazon、Yahoo!ショッピングなどで購入できます。MoMA版は1本約1,400円前後です。
スガキヤは現在何店舗ありますか
2024年8月時点で約258店舗。東海地方を中心に、関西・北陸にも展開しています。関東再進出で3年後には300店舗超を目指す計画です。
スガキヤの「甘味メニュー」とは何ですか
創業当時からの伝統で、クリームぜんざいやソフトクリームなどの甘味メニューも提供しています。ラーメンと甘味のセットは「スーちゃん祭」での半額提供でも人気でした。
新社長の菅木寿一氏はどんな人ですか
現専務取締役で、2026年6月24日付で代表取締役社長に就任予定です。「1,000店舗チェーン」構想を掲げ、関東再進出を第一歩と位置づけています。現社長の菅木伸一氏は代表取締役会長に就任します。
名古屋のソウルフードが関東の食卓に届く日

過去2度の撤退を経験しながらも、スガキヤは再び関東に挑みます。80年の歴史で培った味と、MoMAが認めたデザイン哲学、そして過去の失敗から学んだビジネスモデルの再構築。今秋、神奈川のフードコートにスガキヤの看板が灯るとき、東海地方出身者は懐かしさで、関東在住者は新しい発見で、それぞれの「おいしさ」に出会えるはずです。まずは2店舗の続報を待ちましょう。

