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新種クリオネ「イクオネ」とは 名前の由来・中村征夫・6本の触手・見られる場所など

地域ニュース

「流氷の天使」と呼ばれるクリオネに、世界で6番目となる新種が加わりました。2026年10月9日に報じられたこのニュースの主役は、北海道のダイバーの間で以前から「イクオネ」という愛称で親しまれてきた小さな生きものです。名前の由来になったのは、水中写真家の中村征夫さん(81歳)。正式な和名は「イクオハダカカメガイ」と名付けられました。

実はこの生きもの、30年近く前から写真には撮られていたのに、長いあいだ「クリオネの仲間ではない」と考えられていました。なぜ今になって新種と判明したのか。その背景には、触手の本数をめぐる意外な見落としがありました。

この記事でわかること

  • 新種クリオネ「イクオネ」の正式名・研究チーム・判明した経緯
  • 名前の由来になった水中写真家・中村征夫さんとのつながり
  • 普通のクリオネ(ハダカカメガイ)との見た目・体のつくりの違い
  • 世界のクリオネ6種の一覧と、日本で見られる場所・時期

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新種クリオネ「イクオネ」とは?判明したことを整理

今回の研究成果を発表したのは、東洋食品研究所(兵庫県川西市)と北海道立オホーツク流氷科学センターの研究チームです。論文では、これまで別のグループに分類されていた生きものが、実はクリオネ類(Clione属)の一員であり、しかも未記載の新種であると報告されました。

項目 内容
正式和名 イクオハダカカメガイ
愛称 イクオネ(ダイバーの間での呼び名)
位置づけ 世界で6番目のクリオネ類の種
研究チーム 東洋食品研究所/北海道立オホーツク流氷科学センター
初めて撮影された場所 北海道・知床半島の海(水深約10メートル)
初めて出会った時期 1990年代
名前の由来 水中写真家・中村征夫さん(81歳)

「4本」と思われていた触手が、実は「6本」だった

クリオネは、獲物を捕まえるときに頭からにゅっと伸ばす「バッカルコーン」という触手を持っています。愛らしい姿から一転して捕食シーンが「ちょっと怖い」と話題になる、あの器官です。一般的なクリオネのバッカルコーンは6本です。

ところがイクオネは、これまでバッカルコーンが4本しかないと考えられていました。この違いを根拠に、クリオネとは属のレベルで別のグループとして扱われてきた経緯があります。研究チームが体のつくりを細かく観察したところ、実際には6本のバッカルコーンを備えていることが判明しました。さらに遺伝子解析でもクリオネ類に含まれることが確かめられ、新種としての記載に至っています。

数ミリ単位の小さな器官を、生きた状態で正確に数えるのは簡単ではありません。「4本に見えていた」こと自体が、観察の難しさを物語っているとも言えそうです。

見た目は「ふっくら丸い」のが特徴

報道によると、イクオネは一般的なクリオネ(ハダカカメガイ)と比べて、輪郭がふっくらと丸みを帯びているのが特徴とされています。ほっそりした体に翼のような足を持つおなじみのクリオネとは、ひと目で印象が異なるようです。ダイバーが「あれはイクオネだ」と見分けられたのも、このシルエットの違いがあったからでしょう。

名前の由来・水中写真家の中村征夫さんとは

イクオネの「イクオ」は、水中写真家の中村征夫(なかむら・いくお)さんのお名前から取られています。中村さんは1945年秋田県生まれの写真家で、東京湾の海中を撮り続けた作品で知られ、写真集『全・東京湾』で木村伊兵衛写真賞を受賞した経歴を持つ、日本の水中写真界を代表する一人です。

知床の海で1990年代に出会った小さな生きもの

中村さんがこの生きものに初めて出会ったのは1990年代、北海道・知床半島の海でした。水深およそ10メートルという、ダイバーが潜れる比較的浅い場所です。中村さんが撮影した姿をきっかけに、仲間のダイバーや水中写真家の関勝則さんらがいつしか「イクオネ」と呼ぶようになり、愛称として定着していきました。

学術的な名前がまだ付いていないうちから、現場の人たちが撮影者の名前で呼んでいたという点は、なんとも温かいエピソードです。中村さんご本人は、和名に自分の名前が入ったことについて「自分の名前がつくなんて、おこがましい」と控えめに話しています。

愛称がそのまま和名になったのは珍しいケース

新種の和名は、発見場所や体の特徴、研究に関わった人物にちなんで付けられることが多いと言われています。このケースではダイバーの間で30年近く使われてきた愛称を土台にして「イクオハダカカメガイ」という和名になりました。ちなみに、普通のクリオネの和名は「ハダカカメガイ」です。「イクオ」+「ハダカカメガイ」という組み立てを知ると、名前の意味がすっと頭に入ります。

そもそもクリオネってどんな生きもの?意外と知らない基本

イクオネの面白さを味わうには、クリオネそのものを知っておくと理解が深まります。「流氷の天使」というイメージが先行しがちですが、実は意外なプロフィールを持つ生きものです。

クリオネは「貝」の仲間

クリオネは、軟体動物の中でも巻貝の仲間に分類されます。生まれてすぐの幼生期には小さな貝殻を持っていますが、成長するとその殻を失うのが特徴です。「ハダカカメガイ(裸亀貝)」という和名は、まさに殻のない貝という意味が込められています。翼のように見えるのは「翼足(よくそく)」と呼ばれる足が変化した部分で、これをパタパタと動かして海中を泳ぎます。

透けて見える赤いオレンジ色の正体

クリオネの体の真ん中に見える赤やオレンジ色の部分は、主に消化器官などの内臓です。体の大部分が透明なため、中が透けて見えます。主食は「ミジンウキマイマイ」という殻を持つ小さな巻貝で、バッカルコーンを伸ばして捕まえて食べます。つまり、貝が貝を食べているという、知るとちょっと驚く食生活です。

トリビア:エサがなくても長く生きられる

クリオネは、エサを食べなくても体に蓄えた栄養で長い期間生き延びられることが知られています。水族館で飼育されている個体も、ミジンウキマイマイを安定して与えるのが難しいため、こうした性質に支えられている面があると言われています。

世界のクリオネ6種を一覧で比較

クリオネ類が暮らす冷たい北の海のイメージ(新種クリオネ イクオネの生息環境)
Photo by Alari Tammsalu on Pexels

今回のイクオネで、クリオネ類(Clione属)は世界で6種になりました。主な既知種を整理すると次のとおりです。

種名 主な分布 特徴・メモ
Clione limacina 北極海・北大西洋 1774年に記載された最初の種。体長約8センチと大型
Clione elegantissima(ハダカカメガイ) 北太平洋・オホーツク海 日本で「クリオネ」として見られる代表種。体長2〜3センチ
Clione antarctica 南極海 南半球の冷たい海に暮らす種
Clione okhotensis オホーツク海南部 2017年に記載。体長1センチ足らずの小型種
Clione japonica 日本海の深海など 富山湾の水深約700メートル付近から報告された種
イクオハダカカメガイ(イクオネ) 北海道・知床半島の海など 2026年に新種として報告。ふっくら丸い輪郭

こうして並べてみると、6種のうち3種が日本周辺の海から報告されていることがわかります。オホーツク海や日本海は、クリオネ研究の最前線と言ってもよさそうです。古くから「北の海の小さな天使」として親しまれてきた生きものに、まだまだ未知の仲間がいます。その事実だけでも、海の奥深さを感じさせてくれます。

クリオネを実際に見られる場所と時期

イクオネそのものを見る機会はまだ限られていますが、クリオネ(ハダカカメガイ)であれば国内でも比較的出会いやすい生きものです。

水族館で見る

水族館の大水槽を眺めるイメージ(クリオネ展示の楽しみ方)
Photo by Lu Zhao on Pexels
  • オホーツク流氷科学センター(北海道紋別市):今回の研究チームの一角。流氷やオホーツク海の生きものを紹介する施設で、クリオネの展示でも知られています
  • アクアマリンふくしま(福島県いわき市):北海道で採集したクリオネを展示する取り組みを行っています
  • 鳥羽水族館(三重県鳥羽市):生きもの図鑑でハダカカメガイを紹介しています

展示の有無や時期は施設ごとに変わるため、出かける前に各施設の公式サイトで最新情報を確認するのが確実です。

自然の海で見る

氷の下の冷たい海を泳ぐダイバーのイメージ(流氷ダイビングでクリオネ観察)
Photo by Svetlana Obysova on Pexels

北海道のオホーツク海沿岸では、おおむね12月〜4月の冬から春先にかけてクリオネが見られる時期とされています。流氷が接岸する時期には、流氷の下に潜る「流氷ダイビング」でクリオネを観察するツアーも実施されています。水温は0度前後と非常に低く、ドライスーツでの経験が求められるのが一般的です。中村さんがイクオネに出会った知床の海も、こうした冬の海の一つでした。

観察するときのポイント

  • 体長1〜3センチほどと小さいため、水槽の前ではじっくり時間をかけて探すのがコツです
  • 翼足を動かす泳ぎ方や、内臓の色の違いに注目すると、個体ごとの違いが見えてきます
  • バッカルコーンを伸ばす捕食シーンは、エサやりのタイミングでないとまず見られません

イクオネ・新種クリオネに関するよくある質問

Q. イクオネの正式な名前は何ですか?

A. 和名は「イクオハダカカメガイ」です。「イクオネ」はダイバーの間で使われてきた愛称で、水中写真家・中村征夫さんのお名前にちなんでいます。

Q. なぜ今まで新種だとわからなかったのですか?

A. 捕食用の触手「バッカルコーン」が4本しかないと考えられ、クリオネとは別の属として扱われていたためです。研究チームが体のつくりを詳しく調べた結果6本あることがわかり、遺伝子解析でもクリオネ類の一員と確認されました。

Q. 研究を行ったのはどこのチームですか?

A. 東洋食品研究所(兵庫県川西市)と北海道立オホーツク流氷科学センターの研究チームです。

Q. 普通のクリオネとの見分け方はありますか?

A. 報道では、一般的なクリオネより輪郭がふっくらと丸みを帯びている点が特徴として挙げられています。

Q. イクオネはどこで見られますか?

A. 初めて撮影されたのは北海道・知床半島の海、水深約10メートル付近です。現時点で常設展示している水族館の情報は確認できていないため、今後の展示情報は各施設の発表を待つのがよいでしょう。

Q. クリオネは何を食べていますか?

A. 主に「ミジンウキマイマイ」という殻を持つ小さな巻貝を食べています。クリオネ自身も貝の仲間なので、貝が貝を食べていることになります。

Q. 世界にクリオネは何種類いますか?

A. 今回のイクオハダカカメガイを含めて、クリオネ類(Clione属)は世界で6種になりました。そのうち複数の種が日本周辺の海から報告されています。

小さな天使の新しい仲間を見に行こう

30年近く「イクオネ」の愛称で呼ばれてきた生きものが、ついに正式な新種として名前を持ちました。現場のダイバーの観察と、研究者の丁寧な調査がつながって生まれた成果です。クリオネが巻貝の仲間であることや、6種のうち複数が日本の海から見つかっていることを知ったうえで水族館の水槽をのぞくと、あの小さな姿がこれまでとは違って見えるはずです。今冬、オホーツク流氷科学センターなどクリオネを展示する施設を訪ねる計画を立ててみてください。




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