2026年の夏を前に、読売ジャイアンツが興味深い取り組みを始めました。本拠地・東京ドームの試合前練習で、場内の空調温度を通常より4℃引き上げているというニュースが話題になっています。SNSでも「ドームの空調をわざと暑くする?」と驚きの声が相次ぎました。
背景にあるのは、昨季(2025年)7月・8月で負け越し5を喫した苦い経験。ドーム内の快適な環境に慣れた選手が屋外球場の猛暑に対応できなかったという反省から生まれた施策です。空調の仕組み、暑熱順化の科学的根拠、観客への影響まで、このユニークな取り組みを掘り下げます。
東京ドーム空調4℃上げの概要
2026年5月下旬から、巨人は東京ドームでの試合前練習時に空調設定温度を通常より4℃引き上げる取り組みを開始しました。公式発表によると、選手たちは練習開始から大粒の汗を流しながらトレーニングに励んでいるとのこと。
通常、東京ドームの夏季空調設定は約28℃に保たれています。つまり、練習時は約32℃前後という環境で選手たちが体を動かしている計算になるでしょう。ちなみに、試合中は通常設定に戻されるため、観客への影響はありません。
| 項目 | 通常時 | 練習時(4℃上げ) |
|---|---|---|
| 空調設定温度 | 約28℃ | 約32℃ |
| 対象時間 | 試合中・イベント時 | 試合前練習のみ |
| 開始時期 | 通年 | 2026年5月下旬〜 |
| 観客への影響 | なし | なし(練習時は非公開) |
なぜ巨人は空調温度を上げるのか — 暑熱順化の科学

「暑熱順化」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、暑さに体を徐々に慣らすことで、発汗機能や体温調節機能を高めるトレーニング手法。スポーツ科学の分野では古くから研究されてきた方法です。
人間の体は、暑い環境に繰り返しさらされると次のような適応が起こると言われています。
- 発汗量の増加 — 汗をかき始めるタイミングが早くなり、効率的に体温を下げられるようになります
- 汗の塩分濃度の低下 — 体から失われるミネラルが減少し、脱水症状のリスクが軽減されます
- 心拍数の安定 — 暑い環境での運動時に心拍数の上昇が抑えられ、パフォーマンスが維持されやすくなります
- 深部体温の低下 — 安静時の体温がやや下がり、暑さに対する「余裕」が生まれます
一般的に、暑熱順化には10日〜14日間の継続的な暑熱環境への曝露が必要とされています。巨人が5月下旬から取り組みを始めたのは、7月の本格的な暑さに備えて十分な順化期間を確保する狙いがあるのでしょう。
東京ドームの空調システム — 意外と知られない仕組み

実は、東京ドームの空調システムは一般的なビルの空調とは根本的に異なります。東京ドームは空気膜構造(エアドーム)を採用しており、屋根を膨らませるために常に内部に空気を送り込んでいるという特徴があります。
地下の大型機械室には4台の1,100RT級吸収式冷凍機が設置されており、2009年〜2010年のリニューアルで省エネ対応の最新機種に更新されました。この改修により、消費電力は約30%削減されたと報告されています。
豆知識として、東京ドーム内の座席エリアによって体感温度は大きく異なります。アリーナ席は観客の体温で熱がこもりやすく、一方で上段席は空調の風が直接当たるため、かなり冷える場合もあるようです。夏場の観戦時には羽織りものを持参する人が少なくありません。
なぜ「空調操作」の都市伝説が生まれるのか
古くから野球ファンのあいだでは「東京ドームは巨人に有利なように空調を操作している」という都市伝説がまことしやかに語られてきました。打球の飛距離が変わるほどの風を人為的に発生させているという噂です。
実際にはドームの空気膜維持のための送風と、空調による気流は別系統。意図的な風向き操作は技術的に極めて困難だと考えられています。今回の「4℃上げ」は空調操作といえば空調操作ですが、その目的は選手のコンディショニングという実にまっとうなもの。都市伝説とは対照的に、きわめて科学的なアプローチです。
他球団・他競技の暑熱対策との比較

暑熱順化に取り組んでいるのは巨人だけではありません。プロスポーツ界では近年、暑さ対策が重要なテーマになっています。
屋外球場を本拠地とする球団では、春季キャンプの時点から計画的に暑熱トレーニングを組み込むケースが増えてきました。サッカーのJリーグでは、夏場の試合前にアイスベストや冷却タオルを活用したプレクーリング(事前冷却)が一般的になりつつあります。
たですし、ドーム球場の空調を利用した暑熱順化は巨人ならではのユニークな手法。快適な室内環境をあえて「不快」にするという逆転の発想は、意外と他球団にはない取り組みかもしれません。
よくある質問

Q. 試合中も空調温度は上がっていますか?
いいえ。空調温度の引き上げは試合前練習時のみで、試合中は通常設定(約28℃)に戻されます。観客が暑さを感じることはないでしょう。
Q. 観客席にも影響がありますか?
練習時は基本的に観客が入場していないタイミングのため、直接的な影響はありません。試合中の快適さは従来通り維持されています。
Q. 暑熱順化にはどのくらいの期間が必要ですか?
一般的なスポーツ科学の知見では、10日〜14日間の継続的な暑熱環境への曝露が目安とされています。巨人は5月下旬から開始し、7月の本格的な暑さに間に合うよう逆算しているようです。
Q. 東京ドームの通常の室温は何度ですか?
夏季は約28℃、冬季は約18℃に設定されています。年間を通じた平均室温は約20℃前後とのこと。ただし座席位置によって体感温度は大きく変わります。
Q. 他の球団もこうした取り組みをしていますか?
屋外球場の球団は春季キャンプ等で暑熱トレーニングを実施するケースがあります。ドーム球場の空調を利用した方法は、現時点では巨人独自の取り組みとして注目されています。
Q. 「ドームラン」の空調操作疑惑との関係は?
今回の施策は打球の飛距離操作とは無関係。選手のコンディショニングを目的とした暑熱順化トレーニングの一環であり、空気膜構造の送風システムとは別系統の空調温度調整となっています。
データに基づく夏場対策に注目

2025年シーズンの7月・8月に負け越し5を喫した教訓から、巨人は2026年シーズンの夏場を科学的アプローチで乗り越えようとしています。東京ドームの空調を4℃上げるという一見シンプルな施策の裏には、暑熱順化の科学的根拠と、選手のパフォーマンスを最大化しようというフロントの意志があるのでしょう。
夏場の試合結果がどう変わるのか。7月・8月の成績が改善されるかどうかに、ぜひ注目してみてください。
